クライミングで手指の皮膚が痛いとき、おすすめケア用クリーム4選
クライミングでは、筋肉より皮膚の消耗が早い?
がっつりとクライミング、ボルダリングをした日、「まだ体力、筋肉的には余裕があるのに、指の皮、手の皮膚が痛くてもう登れない…」って経験、ありませんか?
ジムのホールドは、フリクション(摩擦)をよくするために表面がざらざらしているものがほとんどです。そのため、何本も登っていると、手の表皮に細かい傷がつき、削り取られて薄くなっていきます。
また、外の岩の場合は、ギザギザととがったホールドや、鋭いエッジのあるホールドなどもあり、ジムのホールドとは違いますが、指や手の皮膚が傷ついていきます。
このように手指の皮がダメージを受けることを、クライマーの俗語で「指皮が消耗する」と言ったりします。
日常生活にも支障をきたす手指の皮膚の痛みをケア
指皮が消耗すると、ヒリヒリと痛んで「もうホールドを持ちたくない」となって、クライミングを続けることが困難になります。熱いお茶が入った湯飲み茶碗を持つのがつらくなったり、パソコンのキーボードが打ちにくくなるなど、日常生活にも多少影響が出ます。
ただし、皮膚の表面の薄皮だけの摩耗であれば、通常は2~3日もすれば自然に治癒します。そして、治癒した後は、以前よりほんの少し皮膚が丈夫になります。この、「消耗→回復」のプロセスを何度も繰り返すうちに、だんだんと皮膚が丈夫になり、長時間登っても指皮が消耗しにくく、痛くなりにくくなっていきます。
それでも、たくさん登ればやっぱり曲げ伸ばしをするときの痛みや違和感が残ります。まして、まだ皮膚が厚くなっていない初心者は、なおさらでしょう。
こういった不快感を防ぎ、少しでも早く治すためには、保護クリーム(ハンドクリーム)で皮膚をケアします。
そこで今回は、クライミングの後の皮膚の痛みをケアし、回復を早めるためのハンドクリームについてご紹介します。
メモA(エスエス製薬)
<分類:第二類医薬品>
第二類の医薬品、すなわち「薬」です(分類については下の方にくわしく書いています)。殺菌をしたり、痛みをおさえたり、治りを早くする効果のある成分が含まれています。
薬なので、常用するのは避けた方がいいと個人的には思っています。
・特に皮膚のダメージがひどいとき
・フォールしたときに腕がホールドにこすれて、血がにじむような擦過傷(擦り傷)ができたとき
・外岩で切り傷ができたとき
・リードクライミングでロープバーンができてしまったとき
などに使います。
軽いやけどにも効くので、外岩に行くときは携帯しておくと、なにかと安心でしょう。
使用感:かなりべたべたした、油っぽい感じです。色はやや黄色で、独特の薬っぽい匂いがします。人によっては匂いが苦手かもしれません。
白色ワセリン(健栄製薬)
<分類:第三類医薬品>
ワセリンとは、皮膚表面にパラフィンの幕を張る保湿クリームです。皮膚の保湿だけが目的で、傷を治すような成分は含まれていません。ですので、身体のもつ自然治癒力で治るのをサポートするイメージです。反面、薬効成分が含まれていないため、安全性が高いのが特徴。メモAがあわない人や、敏感な肌の人でも気軽に日常的に使えるでしょう。赤ちゃんにも使えるそうです。
時間がたって肌になじむとすべすべになるので、たとえばクライミングシューズがかかとや足首に当たって「靴擦れ」みたいになって痛いときなど、足の当たる部位に塗ると楽になります。
ただし、強い直射日光下では油焼けになることあるらしいので、炎天下の外岩では使わない方がいいでしょう。
使用感:塗ってからしばらくは、かなりヌルっとした、油っぽい感触でべたべたします。スマホやパソコン、また食べ物などを触るのは控えたい感じです。ほぼ透明で、無臭です。手のケアのためには、寝る前に手にたっぷり塗って、手袋をして寝るとよいでしょう。時間がたってなじむとすべすべになります。
キスミー 薬用ハンドクリーム(キスミー)
<分類:薬用(=医薬部外品)>
私は、ジムで登った日は、基本的に寝る前にこのクリームを塗ります。
「薬用」タイプは多くの製品が出ていますが、これはメジャーな商品でしょう。よく見かけます。すべてのハンドクリームを試したわけではありませんが、私が使った中では保湿力、ケア力はけっこう高いと感じました。
なお、「薬用」と「医薬部外品」は同じ意味です。簡単に言えば、医薬品よりも効き目が薄いものです(くわしくは下の方で解説しています)。薬効が薄いということは、副作用も少ないということになります。また、入手が容易で、値段も安いため、普段使いには、このような「薬用・医薬部外品」タイプの方がいいでしょう。
使用感:割とべたつきは少ない方ですが、下の濃厚こってりクリームよりはべたつきます。匂いはちょっと独特のハッカ臭?ですが、私は嫌いではありません。
メンソレータム ハンドベール 濃厚こってりクリーム(ロート製薬)
<分類:化粧品>
私はジムに行くときにはこのクリームを持っていき、登り終えた後、丁寧に手を洗ってから、塗っています。
皮膚の回復に良いと言われる「シアバター」や「カカオバター」が配合されていますが、薬用ですらない「化粧品」(分類の意味については、下の記事を読んでください)なので、ケアの効果はあまり期待してません。皮膚のこわばりや痛みをやわらげる目的で使います。
それよりも、このクリームの特徴は、その感触です。「濃厚こってり」とあるとおり、クリーム自体は固くて濃いのですが、液体よりも固体に近いというのでしょうか? うまく言えませんが、油のようにベタベタする感じがほとんどありません。塗った感触はサラサラなのです。
そのため、スマホやパソコンもすぐに使えますし、電車の吊革につかまるのも、食事をするのも気になりません。上の3つだと、塗ってしばらくはベタベタするので、そういうことがやりにくいのです。登った直後に限らず、仕事する前などは、べたつかないこのクリーム一択で使っています。
使用感:すぐにサラサラになるので、昼間でも使いやすい。匂いはほぼ無し。
世の中には「クライマーのためのハンドクリーム」みたいなうたい文句で発売されている商品もあります。しかし、その成分を確認してみると、ごく一般的なものが使われており、どこが「クライマーのため」なのかよくわかりません。もちろん、医薬品ではないので治療効果は確認されていないでしょう。
そういった商品の中身が悪いモノだとは思いませんが、医薬品でもないのに、上に紹介したクリームの何倍も高い値段で売られているのは、正直「うーん?」と首をかしげたくなります。
「医薬品」「医薬部外品・薬用」「化粧品」の違い
ハンドクリームを選ぶ際に知っておいて欲しいのは、薬事法によって定めらている次の3分類のどれに当てはまるのかということです。
(A)医薬品
(B)医薬部外品、薬用(「医薬部外品」と「薬用」は同じこと)
(C)化粧品(上の2つ以外)
これらの違いについて、「花王」さんのウェブサイトでは、わかりやすく説明されていたので、引用します。
「医薬品」とは、病気の「治療」を目的とした薬のことで、厚生労働省より配合されている有効成分の効果が認められたものです。
医師が処方するものもあれば、ドラックストアなどで購入することもできる大衆薬(OTC)もあります。ワセリンや保湿外用剤などがスキンケアに用いられる医薬品です。「医薬部外品」とは、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合されています。[治療]というよりは[防止・衛生]を目的に作られています。
(中略)
「化粧品」とは、医薬部外品と比較してもさらに効能・効果が緩和で、清潔にする、美化する、魅力を増す、健やかに保つなどの目的で使用される製品です。
花王Webサイト より引用
効果が確認されているのは「医薬品」だけ
つまり、「傷を治す」といった効果がはっきりと認められているものは、「医薬品」だけなのです。
ちなみに、医薬品の中での、第二類、第三類などの区分については、下のサイトのような説明になります。
「医薬部外品・薬用」は、有効成分は入っているけど、医薬品のようなはっきりした効果はない、というものです。ちょっと玉虫色ですね。
また、「医薬品」でも「医薬部外品・薬用」でもないクリームは、化粧品であって、治療の効果はほとんどないけど、気持ち良かったり、清潔に保ったりはできるよ、ということです。
「医薬品」「医薬部外品・薬用」の場合、その商品のウェブサイトを見れば、そのような記載があるはずです。逆に言えば、「医薬品」「医薬部外品・薬用」などと書かれていなければ、「化粧品」だと考えられます。
また、「医薬品」と「医薬部外品」は「有効成分」を記載することができますが、化粧品の場合は「有効成分」という言い方はできません。説明書きに「有効成分」と書いてなければ、化粧品です。
「医薬品が良くて、薬用・化粧品が悪い」ということではない。賢く使い分けよう
では、ハンドクリームは、「医薬品」ならよくて、「化粧品」ならだめということなのかといえば、そんなことはありません。
医薬品には、用法や用量を定められたとおりに使わなければなりません。他の薬をつかっている人なら、組み合わせに悪影響がないか薬剤師や医師に確認をする必要がありますし、副作用の心配があります。
効果がはっきりあるということは、その分、人によっては「合わない」可能性もあるということなのです。
一方、「薬用」や「化粧品」なら、そういったことをあまり気にせず気軽に普段使いができます。また、値段もだいぶ安いでしょう。
要は、その商品がどの分類なのかを正しく理解して、目的にあわせて使い分けることが必要、ということです。