【クライミングの種類2】リードクライミングとトップロープクライミング
クライミングの本来のスタイルはリードであり、トップロープは、主に初心者の練習用に使われる方法です。
リードクライミングのスタイル
ロープで安全確保をしながら登るルートクライミングには、リードクライミング(リード)と、トップロープクライミング(トップロープ)とがあります。そして、リードクライミングが、ルートクライミングの基本的な登り方であり、本来のスタイルです。
リードクライミング(lead climbing)とは、クライマーが、ルート中の確保支点にセットされたクイックドロー(2枚のカラビナが連結された道具。通称「ヌンチャク」)などに、自分でロープをかけながら登るスタイルのクライミングです。
そして一般的には、一度も落ちずに、ルートの一番上までたどり着き、「終了点」(最後の支点)にロープをクリップすれば、「完登」したことになります。
「lead」とは、「主導する」「引いていく」という意味ですが、基本的に2人1組で行われるクライミングにおいて、先に登る者という意味です。
ちなみに、リードクライマーが登った後、上部でそのままビレイ(確保)をし、次の人が登る場合、2番目に登るクライマーを「フォロー」と呼びます。
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リードクライミングの難しさと危険
リードクライミングは、トップロープと比べてみた場合に、いくつかの点で難しく、また危険な部分があります。
登る動作に、クリップ動作が加わる
リードクライミングで、確保支点にセットされたクイックドローなどにロープをかけることを「クリップする」といいます。
岩を登る動作に加えて、クリップの動作が必要になるので、当然、ただ登るだけよりも、力を多く使います。
また、姿勢が悪い状態でクリップしなければならないこともあり、クリップ自体の技術に習熟していることも必要です。
落ちる距離が長くなる場合がある
リードクライミングでは、クライマーが登っていく高さにあわせて、だんだんと高い位置にある確保支点にロープを掛けていき、落ちた場合の滑落距離を最小限にしていきます。
しかし、確保支点から次の確保支点までは、ロープが遊んでいる状態になるので、クライマーが、次の確保支点にロープをかける前に落ちると、下の確保支点よりさらに下に落ちます。つまり、落ちる距離が長くなります。
たとえば、仮に各支点が2メートル間隔であった場合、身体の中心が上の支点にあるときに、その支点にロープをクリップできずに落ちると、4m滑落することになります。
実際には、ロープの伸びやビレイヤーの移動などがあるため、それ以上になります。
特にアウトドアのルートでは、確保支点と確保支点の間が離れている(これを「ランナウトしている」といいます)ルートもあり、その場合は、次の確保支点にロープをかけられずにフォールすると、かなり長い距離を落ちることになります。ある程度コントロールは可能ですが、危険は増します。
リードスタイルに冒険的価値がある
リードクライミングで「ロープをセットしながら登る」ということは、逆に言うと、登る前は、ルートにはなにも人工的な安全確保が何もセットされていない、まっさらな岩であるということです(実際は、トラッドクライミング以外では、確保支点がセットされてありますが)。
それが、クライミングの「冒険」としての面に、大きな意味を持ちます。何もないところを登るからこそ冒険であり、だからこそ登る価値があると考えられるわけです。
そして、単に登ることだけではなく、クリップをどこでどうするかという戦略性、そして落ちた場合には滑落距離が長くなることの危険や恐怖…。そういった要素が加わるがゆえに、リードクライミングは充実した、冒険的なアクティビティになっているとも言えます。
リードクライミングこそが、ルートクライミングの本来の姿とされるのは、それが、クライミングが登山の一部だった時代から持っている「冒険性」を残しているからです。
トップロープクライミングはもっとも安全性の高いスタイル
ルートの一番上にある終了点にあらかじめロープが掛けられており、その末端にクライマーがぶら下がるような形になりながら登るクライミングが、トップロープクライミングです。
「ぶら下がるような形」とはいっても、登るときには、実際に体重をかけてぶら下がって、引っ張り上げてもらうわけではなく、ロープは少し緩んだ状態になっており、クライマーは自分の手足の力だけで登ります。その点は、リードクライミングと同じです。
しかし、リードクライミングと違って、常に上に確保支点があるため、クライミング中に落ちたときも、落ちる距離は最小限で済みます。そのため、トップロープクライミングは、通常もっとも安全なクライミング形式です。
なお、トップロープクライミングでも、リードと同じく、ロープの末端はビレイヤーが握って操作します。ルートクライミングはいずれにしても、2人1組で行うものです。
トップロープは初心者の練習用
トップロープクライミングでは、あらかじめ終了点にロープをセットしておくことが必要になります。クライミングジムであれば、ジムの設備として常設されていますからそれを使います。
アウトドアの岩場であれば、まずだれかがリードでルートを登り、ロープをセットするのが普通です。(まれに、岩場によってはルートの背後から歩いて回り込んで、終了点をセットできる場合もあります)。
つまり、リードクライミングができず、トップロープでしか登れないクライマーは、常にだれかに助けてもらい、ロープをセットをしてもらわなければならないため、自立したクライマーとはみなされません。
また、トップロープでは、リードクライミングでは必要となるクリップ動作が不要であるため、同じルードでもリードで登るよりは簡単に登れます。
そういったことから、通常、トップロープクライミングは、まだルートクライミングに慣れていない初心者が、初期の練習として行うものです。
ルートクライミングは、あくまでリードで登るのが本来の姿であり、トップロープは「練習用」のため、あるルートをトップロープ状態で一度も落ちずに登ったとしても、通常は「登った(完登した)」とは言いいません。
クライミング本来の姿からすれば、トップロープは初心者のうちだけにして、それを卒業したら、リードクライミングに移行するべきだと言えるでしょう。
トップロープのみで行われる例外もある
本来は初心者の練習用のトップロープですが、難しいルートにトライしているリードクライマーが、部分的にムーブを練習するためにトップロープ状態を利用することもあります。ただし、それがあまり過剰になると、クライミング本来の姿から離れることから、否定的に捉えられることもあります。
なお、特殊な例外として、岩質がもろくて安定した確保支点が取れない岩場では、リードクライミングでは危険が大きすぎるため、トップロープのみで登られることがあります。
また、スピードクライミング競技は、トップロープのみで行われます。