オリンピックの新競技、スポーツクライミング・リード種目の観戦ポイントや注目選手を徹底解説!

新型コロナウイルス感染症の流行下、東京オリンピック・パラリンピックは予定通りの日程で開催されるようです。現時点では、観客は1万人まで、もし緊急事態宣言になれば無観客、と報道されています。

さて、賛否両論ありながらも開催が予定されるオリンピック・パラリンピックにおいて注目の新競技であるスポーツクライミングですが、安全確保のためのロープを付けて、12メートルの高さの壁を登る「リード」、高さ約4メートルの壁でを登る「ボルダリング」、そして登った速さを競う「スピード」の3種目がセットで実施されます。

オリンピックでは、1人の選手がすべての種目に出場するコンバイン形式となっているので、総合力が問われます。
それぞれの種目でルールや見どころが違っていますが、本記事ではリード種目の見どころや、注目選手などをご紹介していきます。

リード種目のルール

まずはリード種目のルールについてご紹介しましょう。

リードはとても簡単に言えば「どの高さまで登れたか」を競う競技になります。まさに、人より少しでも高みを目指すという点で、元来のクライミングらしい競技です。それでは、おさえておきたい5つの基本知識についてご説明します。

壁の高さは12メートル以上、ホールドの配置で難易度が決まる

リードクライミングで選手が登るルートの高さは少なくとも12m以上、壁自体の高さは15m以上にわたります。12メートルは大体4階建ての建物くらいになり、その高さで複雑な動きをこなす選手の技術や体力、精神力には脱帽です。
スポーツクライミングで、3種目すべてに共通して壁に“ホールド”と呼ばれる突起が取り付けられ、コースが設定されます。ホールドの配置や持ちにくさによって、難易度が設定されます。

ルートの難易度を表すグレード

リード種目のルートは、ホールドの配置や持ちにくさによって難易度が設定されます。その難易度は「グレード」と呼ばれます。グレードの表記方法は複数あるのですが、日本では「5.××」という形で表記するデシマルグレード方式が一般的に用いられています。

これは、5.11、5.12、5.13…、といった数字と、a~dのアルファベットを組み合わせて、表記されます。数字が大きいほど難しく、また、アルファベットはa→dの順に難しくなります。たとえば、5.12aと5.12dとでは5.12dのほうが難しく、5.12dと5.13aとでは、5.13aのほうが難しいということです。読むときには、「5.」の部分は省略して「トゥエルブエー」「サーティンディー」などと読まれるのが一般的です。

ちなみに、「5」は、登山界の分類で、フリークライミングを意味しています。

登った高さで勝敗が決まる。制限時間6分。途中で落ちたら競技終了

リード種目は、登った高さを競う競技です。途中で落ちてしまったら、そこで競技終了となります。そして、より高い地点にあるホールドまで登った選手が勝ちとなります。また、競技時間は6分と決められており、落ちていなくても6分が経過すれば、その時点の高さまで登ったこととされて競技終了です。

もっとも高いところにある「ゴール」まで登ることを「完登」といいます。複数の選手が完登した場合は、予選、準決勝の成績が加味して勝者が決められます。そこでも差がつかない場合は、最後の手段として、より短い時間で完登した選手の勝ちとされます。

予選、準決勝、決勝の3ラウンド制

リード種目は、予選、準決勝、決勝の3ラウンド制で行われますが、ラウンドごとに少しルールが異なります。
予選では、見本となるクライマーが登るデモストレーションの動画を、事前に観ることができ、また他の選手が登る様子も見ることができます。複雑な配置にホールドでは、どのように手順を組み立てるかといった「登り方」がとても重要になるのですが、それをあらかじめ見ることができるのです。

一方、準決勝、決勝では、選手は事前に他の人の登り方を見ることができません。それどろころか、壁に設定されたルートを見ることもできないのです。自分が登る順番がくるまで控え室に隔離されて、一切のヒントが与えられません。

その代わり、自分が登る番になったら、登る前に、壁のコースを観察する時間が与えられます。この、登る前に壁のコースを観察することを「オブザベーション」といい、クライミングにおいては非常に重要な時間になります。オブザベーションにより、実際に登り出す前に、どんなホールドがどこにあるのかを覚えておき、どういう手順で身体を動かしていくのか、そのイメージを組み立てておくのです。

安全確保のためのロープ用支点を掴んだり踏んだりすると失格

リード種目では、途中で落ちた時の安全確保のためにロープを使います。ロープは登るために使うのではなく、あくまで安全確保のために使うものです。また、途中に何カ所かある、ロープをひっかけるための道具(支点と支点に設置されたカラビナ)も、安全確保のためのものなので、それを掴んだり、踏んだりした場合は失格になります。

スポーツクライミング・リード種目の観戦ポイント

リード種目は、どの高さまで登れるか、というところが競技のポイントですが、観戦するにあたっては、“選手の動き”に注目しましょう。選手たちは身長も体格も違うため、同じコースでも、個々の得意な動きを活かして攻略していきます。途中で、掴みやすいホールドを持って片方ずつ腕を休ませる「レスト」や、滑り止めの粉チョークを手に付ける「チョークアップ」などのタイミングも、選手によって異なります。そういった選手の違いが分かってくると、より楽しめるようになります。

大きな動きのパートを見る

まずは大きなパートの動きに注目してみましょう。選手は一手一手慎重に登っていきますが、時には大きくジャンプしたり足を大きく開脚したりするような、いわゆる派手な登り方で課題を攻略することがあります。そういうパートでは各選手の動きの違いが明確になるのです。たとえば、背の大きい選手は片手でジャンプするのに対し、小さい選手は両手でジャンプするように個性があらわれます。
大きなパートは注目しやすい動きですから、ぜひとも見つけてみてください。

前の選手が落ちてしまった「核心」パートをどう登るか

準決勝と決勝では、それまでの順位が低い選手から競技に取り組みます。つまり、強い選手がより後に登場するのです。そのため、先に出てきた選手が落ちてしまったパートを、後の実力のある選手がいかに攻略していくかが、見どころになります。複数の選手が立て続けに同じるような難しい箇所を「核心部」と呼びます。会場内にも「あの核心を超えるのは無理なのではないか…」という雰囲気になったとき、続く選手がそれまでの選出とは異なる動きで核心を攻略した時の興奮はたまりません。

パンプする腕とレスト

選手は、12メートルの壁を最初から最後まで全力を出して登っているわけではありません。全力を抱しつづけると、前腕部の筋肉が膨張して力が入らなくなります。これを「パンプ」といいます。パンプはクライマーがもっとも恐れる状態なので、比較的易しいパートでは力をなるべく入れずに温存し、難しいパートだけで全力を出すようにします。そして、上方に伸ばしっぱなしにしていると疲労が蓄積し、パンプしやすくなる腕を、時折わざと下げて脱力させたり、振ったりして疲労回復させるのが「レスト」です。うまい選手は、うまくレストを挟みながら力を温存して登ります。また、難しいパートの前で、両手を交互に何度もレストしながら力の回復を図っている様子のときには、ぜひ「ガンバ!」と応援してあげてください。

主な強豪選手

東京オリンピックのリード種目で、優勝争いに絡んできそうな世界の強豪選手をご紹介します。

ベテランからホープまで しのぎを削る女性選手たち

ヤンヤ・ガンブレット
1999年生まれ、スロベニア出身。2015~18年のリードワールドカップ年間女王で、驚異的な持久力と勝ち続ける精神力は見る者を圧倒します。ワールドカップでチョークバック(滑り止め)を落とすアクシデントに見舞われても、冷静に対処し完登するという強心臓の持ち主。

ソ・チェヒョン
2003年生まれ、韓国出身。2019年のリードワールドカップシリーズでは初出場で準優勝すると、次々と優勝をかっさらい年間女王に。ユース時代から世界で頭角を現してはいましたが、当時圧倒的だったヤンヤをさし置いて女王の座についた彼女に世界は驚愕しました。

野口啓代
1989年生まれ、日本出身。2019年の世界選手権コンバインド(複合)競技2位、得意はボルダリング種目ですが、リードも強く、リードワールドカップでも決勝の常連です。16歳で初出場したワールドカップから17回の優勝を果たし、4度年間女王になっている大ベテラン。

外岩の聖地ヨーロッパから 火花を散らす男性選手たち

アダム・オンドラ
1993年生まれ、チェコ出身。自然の岩場で現時点での「5.14d」というグレードの世界最難ルートを完登する一方で、2019年の世界選手権リード競技でも優勝を果たしました。185㎝ある長身を巧みに使い、岩場で鍛えた持久力と難しいパートでの精神力は群を抜いているでしょう。

ヤコブ・シューベルト
1990年生まれ、オーストリア出身。2019年世界選手権リード競技での3位の成績に加え、2010~19年の間はリードワールドカップの年間表彰台に7度のり、うち3度年間優勝を果たしています。長いキャリアと安定した戦績を誇り、力強い登りの持久力が持ち味。

アレクサンダー・メゴス
1993年生まれ、ドイツ出身。2019年世界選手権リード競技では2位の成績を残しています、リードワールドカップでは決勝の常連ですが2位や3位が多く、優勝の経験は2018年のブリアンソンの1度。自然の外岩での業績も華々しいリードのプロフェッショナルです。

まとめ

本記事では東京オリンピックの新競技スポーツクライミングにおけるリード種目について解説いたしました。
ポイントを押さえて観戦すればさらに観戦を楽しめること間違いなし。本記事を参考にオリンピック観戦を楽しんでください。

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