クライミングシューズ選びに「エジプト型、ギリシャ型、スクエア型」は関係ない。まどわされないように!
デタラメな解説(?)がまかりとおっている
前回の記事、クライミングシューズを買う前に知っておきたいこと(その1)の続き、その2です。
クライミングシューズ(ボルダリングシューズ)の買う前に、ネットや雑誌で情報を集める人も多いでしょう。その際に注意してほしい点があります。それは、クライミングシューズ選びをテーマにした記事でよく出てくる、次のような説明です。
足形にはエジプト型、ギリシャ型、スクエア型の3タイプがあり、自分の足形がどれに当てはまるのかを知って、それに合ったクライミングシューズを選びましょう。
ぶっちゃけて言えば、この説明はほぼデタラメです。
クライミングシューズ、ボルダリングシューズを選ぶ際に、「エジプト型、ギリシャ型、スクエア型」などといったことを気にする必要はまったくありません。
「エジプト型、ギリシャ型、スクエア型」の分類が無意味な理由
その理由は次の3つです。
理由1:人間の足の形は、縦の長さ、横幅、高さ(甲などの厚み)の3次元から構成されるものであり、しかも複雑な凹凸があります。それなのに、足先の形だけを採り上げて、フィットするかしないかを判断できるはずがありません。
理由2:足先の形に着目する場合でも、100人いれば100通りの形があります。それを3タイプに類型化することは、無理があり、無意味です。
理由3:クライミングシューズは足の実寸よりも小さいサイズのものを、足の指を折り曲げ、重ねるような形にして履くものです。そのため、足の指を伸ばした状態で形を論じても意味がありません。
特に3番目は大きな理由です。以下の写真は、私の足と、私が普段履いているクライミングシューズです。汚い足でお見苦しいと思いますが、ご容赦をm(__)m。
クライミングシューズは足よりサイズが小さいので、いずれにしても履くときは指をまげて、シューズの形に合わせるようになることがわかります。クライミングシューズは足の指を「ぎゅーっ」と縮めて履くものですから、伸ばした状態で〇〇型などと言っても意味がないのです。
▼足を普通に伸ばした状態。クライミングシューズは足よりずっと小さい。
▼履くときは下写真のような感じで指を折り曲げ、少し重ねるような感じになる。そのため、元の足先の形はほとんど関係なくなる。
▼横から見たところ。足が普通にリラックスしている状態だと、シューズには入らない。
▼こんな感じで、シューズの中で指を縮めていることで、指先に力が入れやすくもなる。
メーカーもそんな分類はしていない
クライミングシューズを作っているメーカーは、どう言っているでしょうか?
クライミングシューズはフィット感がとても重要です。そのため、シューズメーカーも製品ごとに、そのシューズがどんなタイプで、どんな形で、どんなクライミングに向くのかなど、ユーザーに役立つ情報を可能な限り提供しています。
もし仮に、「エジプト型、ギリシャ型、スクエア型」が、フィット感に影響する意味のある情報なら、クライミングシューズメーカーも、「このシューズはエジプト型の人向け、このシューズはギリシャ型の人向け」などと、明記しているはずです。
しかし実際のところは、そんなことを書いているメーカーはひとつもありません。メーカーはこの分類が無意味だとわかっているのでしょう。
前の記事にも書いたように、クライミングシューズが自分の足に合うか合わないかは、実際に履いて登ってみなければわかりません。最低限、試着は必要です。そして、どうせ試着して確かめるのですから、事前に○○型などという分類されることにはなんの意味もないのです。
検証しないコピペ記事に注意
これを最初に言い出したのは、自分が知る限り、クライミング専門誌『Rock & Snow』の記事でしょう。「なんとなく分かった気にさせる」だけで、はっきり言って役に立たない情報ですが、ずいぶん古い話なので、昔はそんなものでも通っていたのかもしれません。
この「エジプト型、ギリシャ型、スクエア型」の話の問題点は、実際には検証されていないのに、あたかも正しい前提であるかのように情報が流通している点です。
たとえば、同じシューズを、「エジプト型、ギリシャ型、スクエア型」のそれぞれの足型の人たちに実際に履いて登ってもらって、どんな違いがあったか調べた、といった科学的な検証をしている記事を、私は見たことありません。たぶん存在しないはずです(もしあったら、ぜひ教えてください)。
ところがいまだに、検証して確かめることもしないで、「足形にはエジプト型、ギリシャ型、スクエア型があって…」とコピペのように書いている雑誌記事やブログ記事をたくさん見かけます。こういったコピペ情報は、少し前に騒動になった、DeNAの『ウェルク』などキュレーションサイトのように、百害あって一利なしです。
そこで、当記事では、あえてその無意味さを指摘しました。
クライミング、ボルダリング初心者の方ほど、こういう一見もっともとらしい無意味な情報にまどわさてしまいがちですので、気をつけてください。
はじめてのクライミングシューズ選びで気を付ける点は?
上のことを踏まえて、では実際にはじめてクライミングシューズを買う際にはどう選べばいいのかは、次の記事に書いています。あわせてお読みください。