【クライミングの基本技術】カチホールドの持ち方と、カチに強くなるトレーニング

指先だけがひっかかるような小さいホールドが「カチホールド」です。初心者では、このホールドを苦手にしている人も多いようです。今回はカチホールドの持ち方(ホールディング)のコツ、カチに強くなるトレーニング法などについてご説明します。

フォールディングと足置きがムーブの基礎

クライミング、ボルダリングでの体の動かし方のことを「ムーブ」といいます。ムーブについては、クライミングを続けていくうちに自然に覚えるものが多いのですが、やはり意識的に学んだ方が早く身につきます。そして、ムーブの基礎となるのが、フォールディング(ホールドの持ち方)と、足置き(足の置き方)です。

どんなムーブでも、手はホールドを持ち、足はホールドに乗って、動きます。したがって、持ち方、乗り方が悪ければ、ムーブ自体をうまくこなせません。そのため、ホールディングや足置きが、ムーブの基礎になるというわけです。

そこで、何回かにわけて、ホールドの持ち方、そして足の置き方を採り上げて、ボルダリングの初級者から中級者にとって、大いに役立つコツを紹介していきます。

カチの基本

カチホールド、略して「カチ」とは、指先(第一関節くらいまで)だけがひっかかるような、薄いホールドの総称です。「カチっと」持つ感じからカチという名前になったと言われています。

クライミング初心者がまず苦手に感じるのが、このカチホールドでしょう。小さいに突起に指先だけを引っかけて登るという動作は、日常生活ではまず出てこないので、最初はとてもとまどいます。

カチホールドのコツ

カチホールドの持ち方は、大きく分けて2種類あります。

(1)カチ持ち:人差し指から小指までの第2関節を曲げつつ、第一関節を内側に反らせるようにしてホールドに指先を押しつける持ち方。親指は人差し指に添えるか、上に乗せて手を握るような感じにします。日本では「カチ持ち」といいます。英語では「クリンプ」、フランス語で「アーケ」と呼びます。

カチ持ち。親指は人差し指に乗せて固めると力を入れやすい。

(2)オープンハンド:指を伸ばし気味にして、先端を引っかけるだけの持ち方。英語では「オープンハンド」、フランス語で「タンデュ」といいます。日本語の名前はないのですが、「オープン」と呼ばれることが多いようです。

オープンハンド

(3)オープンハンドとカチ持ちの中間くらいの持ち方を「セミアーケ」と呼んで、上の2つと区別することもあります。

「カチ持ち」か「オープン」か

「カチ持ち」の方が指がしっかりと固まって、力を入れて引きつけやすくはなります。しかし、カチ持ちでは手首から指先までが固められるので前腕から指先までの自由度が下がります。そのため、次のホールドへ動く(ムーヴ)ときは肩や背中の力で体を引き上げていくイメージを意識するとよいでしょう。また、カチ持ちであまり激しいムーブを起こすと、指の関節を怪我しやすいことも、注意が必要です。

一方、オープンで持つのは、指がすべってしまいそうで、初心者のうちは頼りなく感じるかも知れません。しかし、オープンの方が手首から先の自由度を高くできるというメリットがあります。

どちらも一長一短があるので、中級以上を目指すのであれば、両方を使い分けられるようにならないといけません。

普段は「カチ持ち」ばかりしているという方は、意識的にオープンを使うように、また逆に普段オープンばかり使っている方は、意識的にカチ持ちを使う練習をすると、ホールディングの幅が広がってよいでしょう。

カチの力をつけるトレーニング方法

最初に書いたように、カチホールドを持つような動作は、日常生活ではまず出てきません。クライミング以外で、カチのホールディングを鍛えるには、指先だけで引っかけてぶら下がれるところを見つけて、1日おきくらいにぶら下がるのがいいでしょう。このとき「カチ持ち」ではなく、オープンを使います。

このとき、鉄棒だとか、家の鴨居のように、指先を丸めて引っかけられるところにぶら下がっても、カチの力は強くならないので、注意が必要です。

引っかけるところの大きさ(幅)とか、摩擦によってぶら下がれる時間が変わってくると思います。だいたい、6~10秒くらいで限界になるところでぶら下がると、カチを持つための筋力がアップします。

もし、1~②秒しかぶら下がれない、または、まったくぶら下がれないというときは、まだ指の力が弱いので、足をついたまま少しずつ力を入れていくといった練習を繰り返しましょう。

逆に、10秒以上らくらくぶら下がれるようだと、負荷が低すぎるので、そういう場合は
・ぶら下がる指の本数を減らす
・おもりを背負う
などして負荷を高める工夫が必要です。

一般的に、小さな筋肉はなかなか発達しないと言われます。カチのホールディングに必要な手の筋肉はとても小さいので、なかなか強くなりません。無理せずに、根気よくトレーニングを続けることが必要です。

クライミング、ボルダリングのムーブは、
・ホールドの持ち方(ホールディング)
・足の置き方
・身体の動かし方
によって構成されます。
そのいずれも重要ですが、もっとも基礎となるのはホールドの持ち方(ホールディング)です。なぜなら、両手がホールドから離れてしまったら、あとは落ちるだけ。逆に言えば、ホールドが持てさえすれば、少なくとも落ちることはないからです
まず、さまざまなホールディングをしっかり身につけましょう。

応用ワザ1:外傾カチは素早くやり過ごす

中級くらいの課題になると、外傾カチのホールドが出てきます。多くのカチホールドは上面が水平なエッジになっているかあるいは壁側に抉れていたり傾斜したりしていますが、外傾カチとはこの逆で、文字通り壁の外側に傾斜しているホールドです(写真では□で囲った所)。

外傾カチ

指を置ける所が壁からクライマー側に傾斜しているため、すべりやすく持ちにくいホールドです。特にスラブ(傾斜が寝ている坂道のような壁)では、このような外傾カチが登場する事がよくあります。

スラブではこのような外傾カチが出てきたときは、ホールドの縁をカチ持ちすればまず持てます。もしカチ持ち出来ない場合は、指先全体で包むようにして、真下に力を掛けると、あまり力を使わずに持つ事ができます。

外傾カチの持ち方の例

スラブ壁の場合、壁自体が寝ているので、「真下」に力を掛けるというのは、壁と平行に、ということではなく、壁の方にやや押しつけるイメージで力をかけるということになります。ここは間違えやすい点ですので、注意してください。

もし、こういった外傾カチホールドが普通の垂直の壁や前傾壁で出てきたときは、こうは行かなくなります。中級者~上級者はスローパーのように持てる人もいますが、最初は縁をカチ持ちを試してみましょう。掴む、保持するというよりは固めた指先をフックのように引っ掛け下に体重をかける感じです。

そして、まともに保持(キープ)しようとするより、一瞬手を引っかけてすぐにその手を次のホールドに手を飛ばす「中継」のように使うのが良いでしょう。

悪いホールド(持ちにくいホールド)にはとどまらずに、素早く通過することを意識するのも、上達のコツの1つです。

応用ワザ2:さまざまな持ち方を試してみよう

カチホールドから、次の一手が遠くて、デッド気味に飛ばさなければならなかったり、場合によってはダイノ(ランジ)をしなければならないことがあります。とくに、ホールドがやや低めの場合、カチ持ちでは外れやすいし、オープンだと力が入れにくいく、ホールディングが難しくなります。また、横に移動するようなムーブの場合も、外れやすくなりまます。

こういう場合は、オープンよりも少し第二関節を曲げた「セミアーケ」の状態にしたり、親指でホールドの下をつまむ「カチピンチ」にすると、動きやすくなることがあります。これは自然には出てこないホールディングなので、意識して練習しましょう。

もし、「カチからの遠い1手」がうまく取れないときには、持ち方を変えることを試してみてください。

▼同じホールドでもムーブによって様々な持ち方を使い分けてみよう。
オープンハンド。

 

カチ持ち。

 

セミアーケ。

 

ピンチ持ち。横に動くようなムーブを起こしやすい。
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